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「戻るぞ。もしかしたら、あそこに巣があるのかもしれん」
徳丸は、林に向かって進みだした。
「ええーっ、また戻るの?」
里奈はやけくそ気味の愚痴をこぼしならも立ち上がると、徳丸に遅れて歩き出した。
里奈が息を切らせながら林の中に入ると、すでに徳丸の姿は見えなくなっていた。
「本っ当に勝手なんだから」
里奈がきょろきょろと周りを見回していると、頭上から奇妙な鳴き声が聞こえた。
見上げると、大きな鳥が木々の間を縫うように滑空していた。
「こんなところに」
里奈は、とっさにカメラをかまえた。
しかし、オウギワシは、被写体になるのを避けるかのように、林の奥へと飛んで行った。
里奈は、鳥を追って奥へと進んだ。
しかし、すぐにオウギワシの姿を見失った。
重い機材を持ったまま移動したため、里奈は息切れし、両手を膝に置いたまま、激しい呼吸を繰り返した。
そんな里奈の視界に、一つの人影が入った。




