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「仕事もろくに出来ないくせに、へ理屈ばかり言いやがって。
そうだ、いいことを思いついたぞ」
「なんですか?」
疲労困憊の里奈は、うつむいたまま生返事をした。
「オウギワシは中南米に生息し、主に小型、中型の哺乳類、たとえばナマケモノなどを餌にしている。
そこでだな」
すでに、里奈の頭には徳丸の話が入ってきていない。
「里奈、おまえをナマケモノに見立てて囮にする」
「え?ええっ?あたしが囮にぃ?」
徳丸のとんでもない話に、里奈は顔を上げた。
「そうだ。まずは、ナマケモノにそっくりなおまえを、木の上に縛りつける。
きっと、オウギワシは餌だと思ってやって来るだろう。
そうなれば、この俺がオウギワシが狩りをする様子をじっくり観察出来るってわけだ。
どうだ、我ながら素晴らしいアイデアだろう?」
「なんで、あたしが鳥なんかをおびき寄せるための囮にならなくちゃならないんですかっ」
里奈は座ったまま、徳丸を睨みつけた。




