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「何じゃ、ありゃあ」
2人はそのまま桜の古木を見上げていたが、突如オウギワシは翼を強く羽ばたかせると、枝から飛び立ち、滑空したまま飛び去って行った。
「あっちは帝王ホテルの方角だなあ」
徳丸は、眉の上に手を当て、オウギワシが飛び去った方角を遠目に見ている。
「もしかしたら、近くに巣でもあるのかもしれねえなあ。
行ってみるかあ」
徳丸が独り言のように言った。
「え、ええーっ?そんなの、ドローンでも使わなくちゃ無理ですよ。
それに、私たち、これから取材に行かなくちゃならないんですよ、昨日の現場まで」
「ま、多少遅れてもかまわんだろ」
徳丸は平然と言った。
「あのですね、そんなことしてたら、遅れるどころか、今日、現場に行けなくなりますよ」
「ま、そん時はそん時だ。明日行けばいいだろ」
徳丸のどう考えても有り得ない言動に、里奈は唖然となっていた。




