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眼鏡をかけた初老の男性が、この黒づくめの男の後ろを通りかかった。
初老の男性は足を止め、後ろから黒づくめの男の絵を覗き込んだ。
気の良さそうな年配のその男性は、「ほう」と感嘆したような声を上げた。
一方で、黒づくめの男はそれに気づきもしない様子で、一心不乱に筆を走らせている。
やがて、描き終えたのか、男はスケッチブックを脇に置くと、ホッとしたような表情を浮かべ、大きく伸びをした。
初老の男性は立ったまま、相変わらずスケッチブックに描かれた虎の絵をじっと見ていた。
「うまいもんだねえ」
感心したように呟いた初老の男性は、しゃがみこむと、魅入られたように絵を見つめていた。
さらに、かけていた眼鏡を外し、スケッチブックにさらに顔を近づけた。
その時だった。




