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キラーB 6
堀田はビニール製の手袋をはめた手で、マンションのドアを開けた。
「何なんだ、この臭いは!」
強烈な異臭が、すぐに鼻に飛び込んできた。
堀田は顔の前を手で数度払った。
後ろに控えていた警官たちも同様で、堀田の班に配属されたばかりの白井は、ハンカチで鼻と口を押えている。
堀田は中に入った。
玄関が濡れ光っていた。
よく見ると、それは粘り気を含んでいるようだった。
先に入っていた若手の鑑識が、しゃがんだまま、堀田にビニール製の靴カバーを差し出した。
堀田は慣れた手つきでそれを履きならした革靴の上から被せた。
白井も同じくそれを付けた。
この部屋の玄関から廊下の先まで、液体がずっと付着していた。
廊下は液体が付着していない箇所にだけ、シートが敷かれていた。
堀田は一度、玄関の外を確認した。
ドアの外には、濡れた跡は無かった。




