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「ちょっとは落ち着けよ。
殺人事件なんて、そんなに珍しいことじゃねえんだから」
徳丸はゲーム機の画面を見つめたまま言った。
「そうなんですか?」
里奈の丸い目がさらに丸くなった。
「ああ。東京じゃあ、人はすぐに殺されるよ。
自殺に見せかけた殺しも多いしな」
「ええっ、本当に?」
里奈はオーバーともいえる表情を浮かべた。
「特に、恨まれたヤツなんかはな。
今回も怨恨の線だろ。被害者は相当恨まれてたようだしな、色んな方面から」
徳丸に対し、里奈が何か言おうとした時だった。
庭の門が開き、一人の警官が出てきた。
年は40代半ばほどだろうか。
小太りの体型に銀縁のメガネをかけ、髪もだいぶ薄くなった冴えない風体の男だった。
途端に記者たちの表情が変わり、一斉にそちらに体を向け。カメラ、手帳、ボイスレコーダーなどを取り出した。
ただ、徳丸だけは、なんとものんびりした様子で、とりあえずゲーム機をしまっただけだった。




