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閑静なはずの高級住宅街が騒然となっていた。
何台ものパトカーが路地に一列に止められ、その周囲にあぶれたマスコミのワゴン車が止まっていた。
ニュース用の録画撮りをしているマイクを持ったレポーターが、テレビカメラに向かってレポートをしている。
その周辺には、カメラを手にした記者たちが待機していた。
雑誌記者の徳丸祐二は、この人ごみの中に紛れ込んでいた。
新聞記者やテレビ局の記者が忙しく動き回っているのとは対照的に、呑気にゲームをして時間を潰している。
それも、スマホではなく携帯型ゲーム機を持ち込んでである。
その隣に、一人の若い女性が肩から下げたカメラを両手で持ち、たたずんでいる。
啓示社に入社したばかりで、徳丸の取材に同行することになった沢田里奈である。
「私、初めての取材なんですよね。緊張するなあ」
カメラを手にした里奈が、そわそわと落ち着かぬ様子で言った。
小柄で痩せた身体に、カメラがやけに大きく映る。
一方の徳丸は、相変わらずゲームに夢中だ。




