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早坂はもはや、言葉を返すどころか、指一本動かすことも出来ない。
頭の上方から、生臭い臭いがした。
倒れている早坂の頭が、わずかに床から持ち上げられた。
その後、早坂の頭部が何かに覆われてゆく。
「まさか・・・・・・?俺を喰うつもりか!」
蛇は獲物を殺してから呑み込むんじゃないのか?
俺はまだ生きている!
すでに、頭は蛇の体内だった。
そのまま、肩口も呑み込まれてゆく。
しかし、自分ではどうすることも出来ない。
その状態でもなお、ガラガラヘビは足や腕に咬みついてきた。
激烈な痛みと、呼吸が出来ない苦しさが早坂を襲う。
不意に、巨大な蛇に呑み込まれようとする自分の体を、自分自身が外から眺めている映像が頭に浮かんだ。
大蛇は有り得ない程に巨大な口を広げ、倒れたまま動かない早坂の体をゆっくりと呑み込んでいく。
やがて、意識が無くなった。




