57/341
56
「血清のある病院の連絡先が書いてあるなんて、私、一言も言ってません。
ただ、描いてある、と言っただけです」
スマートフォンから、女の声が流れた。
相手を騙し終えたとでもいうようなイントネーションだった。
この時、女の声に対し、早坂は何も答えることが出来なかった。
男が手にしている紙、そこに描かれてある蛇が、抜け出し現れたのである。
その蛇は、ガラガラヘビよりも遥かに巨大だった。
「う、うわっ」
早坂は、突如現れた大蛇から逃げようとした。
しかし、ガラガラヘビに何度も咬まれ毒が回った体は、痛みもあって容易に動かない。
大蛇は口を目いっぱい開け、倒れている早坂の頭に齧りついた。
さらに、それとほぼ同時に、太い胴体を早坂の上半身に巻きつけた。




