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「あれは、玉川の命令でしたことだというのね」
「そうだ。悪いのは玉川さんなんだ。
だから、頼む、助けてくれ」
泣きわめく早坂に、ガラガラヘビがじりじり近づいていた。
早坂はスマートフォンを耳に当て、座り込んだまま、後ずさった。
ガラガラヘビが襲いかかってくる時のスピードがいかに速いか、身をもって知っている。
逃げることなど出来ない。
そうしているうちにも毒が回り、激痛で気が狂いそうになった。
「教えてくれよう、頼む、頼むから。
金ならいくらでも出す、だから、お願いだから」
早坂はなりふり構わず、謝った。
「すべては玉川の差し金で、あなたは悪くないのね?」
「そうだ。わかるだろう。
あの人には逆らえないんだ」
「金ならいくらでも出すのね?」
「ああ、いくらでも」
「1億でも?」
いくら早坂でも、その額に対して即答は出来なかった。
それでも、
「わかった、出す。だから、早くたすけてくれ」
そう言った。
早坂の言葉の後、部屋にはガラガラヘビの警戒音だけが響いていた。
10秒ほど経った時、
「わかったわ」
女の落ち着いた声が早坂の耳に届いた。




