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「そこに居る蛇たちは毒を持っています。
強引に逃げようなんて馬鹿なことはしないでくださいね」
その声が終わらないうちに、「ぐわぁ」と早坂が悲鳴を上げた。
一匹の蛇が目にも止まらぬ速さで、早坂の左足首に喰らいついた。
早坂が足を上げる間も無かった。
「まさか、その子たちが毒蛇である可能性をまったく考えない程のおバカさんだとは、思いませんでしたわ」
呆れたような声だった。
「何だ、何なんだ、これは!ぐぎゃー」
倒れたままでスマートフォンを持った早坂の手首に、今度は別の蛇が噛みついた。
「ガラガラヘビが毒蛇であることも知らなかったんですか?
名前ぐらいは知ってますよね?」
「ガラガラヘビだと?」
早坂は倒れたまま顔を上げた。
何匹ものヘビがとぐろを巻き、尾の先の節のような突起部を震わせていた。
「ジーッ」という低い音は、ガラガラヘビの尾から発せられたもので、多数の蛇から発せられることによって、重なり合い、絶え間無く鳴り響いていた。




