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「馬鹿馬鹿しい!付き合ってられるか!」
早坂は、スマートフォンを耳から離した。
途端に、「ジー」っという低い音が聞こえてきた。
何の音か分からないが、セミの鳴き声のようにも聞こえた。
早坂は、その音がスマートフォンから聞こえてくるのだと思った。
だが、スマートフォンを耳から遠く離しても、変わらず音は聞こえてくる。
早坂は部屋を見回した。
その後、視線をほんの少し下げた。
ある物が男の目に入った。
灰色と緑色が複雑に絡み合ったような模様をした細長い物が、高級絨毯の上で無数に絡み合っている。
「へ、へびー!」
早坂の顔が一気に青ざめた。
部屋から逃げ出そうと、ドアに目をやった。
だが、ドアの手前にも、行く手を阻むかのように、蛇が集まり、とぐろを巻いていた。
逃げ出そうと片足を上げていた早坂は、その体勢のまま固まった。




