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なぜ、玉川の携帯を使って女がかけてきたのか?
早坂の頭は混乱した。
怒鳴りつけようかとも思ったが、万が一、玉川の新しい女だったらまずいと考え、思いとどまった。
「失礼ですが、どちらさまですか?」
早坂は、自分の出せる最もソフトな声で尋ねた。
「私を忘れてしまったの?
あんなに激しく愛してくれたじゃない」
女の言葉に、早坂は脳内を巡らせた。
キャバ嬢や娼婦を始め、何人もの女の顔が浮かんだ。
しかし、特定することが出来ない。
女がハッタリをかましているのかもしれないが、確証は無い。
「失礼ですが、思い出せないもので。どちらさまでしょうか?」
早坂のこめかみから汗が噴き出していた。




