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都心からさほど離れていないにもかかわらず、閑静な住宅街。
その一角に、白亜の豪邸がそびえ立っている。
うだるような暑さの昼下がり。
いかにも値が張りそうなロッキングチェアに、一人の男が背をもたれている。
くつろいだ男が見つめる先には、やり過ぎともいえる程に手を入れられた庭があり、チェアーのすぐ横にある背の低いガラス製のテーブルには、ワインの入ったボトルとグラスが置かれてあった。
年の頃は50前後。
大柄のがっしりとした体。鼻の下には口髭をたくわえ、薄くなった頭部に眼光鋭い目。
派手なガウンを羽織ったその姿は、ワンマン社長といったイメージがぴったりとくる。
突如、「バサッ」という聞きなれぬ音がして、男はそちらに顔を向けた。
真昼間からほろ酔い気分に浸っていた男は、手にした赤い液体の入ったグラスを落とさんばかりに驚いた。




