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啓示社を後にした堀田は、雑居ビルのすぐ側に止めてあった車に乗り込んだ。
運転席には、一人の男が乗っていた。
小太りで髪を短く刈り込み、白井よりも10才ほど上に見えた。
堀田は助手席に座ると、抱えていた大きな包みを後部座席に置いた。
程なく、車が走り出した。
「用事はお済みですか」
運転席の男が言った。
白井と異なり、年上の堀田に対してもフランクな話し方だった。
「ああ」
堀田はシートベルトをしながら答えた。
「あの記者が言わなければ、あの場にいた警官もあのヤバイ鳥、何て言いましたっけ、そいつを素手で触ってたかもしれませんね」
「そうだな」
玉川と稀崎映美の会見場で何が起きたかについて、堀田は後から知った。
徳丸が大声で警告したおかげで、警官は玉川の口から素手でズグロモリモズを取り出さずに済んだ。
あいつも役に立つことがあるんだな。
「それにしても、白井まで巻き込まれるなんて、とんでもねえ事件したね。
あ、まだ終わったかどうかも、わからねえか」
「いや、事件は終わった。
もうこれ以上の殺人は起きないはずだ」
堀田の口調が思いがけず強いものだったので、男はやや驚いた様子で堀田を横目で見た。




