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「あの時は大変だったね。
毒蛇がすぐ側にいて、あんたは人質のようなもんだった」
「あかりさんは、蛇に私を襲わせるつもりは無かったと思います。
だから、そんなに怖くはなかったです」
ああ、そうだった。
安永あかりは、決してこの娘を傷つけはしなかっただろう。
あの時、俺は安永あかりを止めることが出来た。
安永あかりが念を送るのを強引にでも止めていれば、玉川は死なずに済んだに違いない。
だが、そうはしなかった。
万が一、毒蛇が里奈に咬みつくのを恐れたのか?
安永あかりに挑みかかるのが怖かったのか?
あるいは、玉川のような男は死んで当然と思ったのか?
それとも、安永あかりに同情し、復讐を遂げさせてやろうと思ったのか?
一瞬のうちに、いろいろな考えが頭に浮かんだが、それを止めた。
堀田は一転して和らいだ表情を浮かべ、里奈を見た。
「今日来たのは、あんたに見てもらいたいものがあったからなんだ」
堀田は持参した大きな包みを開けた。
布を外すと、中から大きなキャンバスが現れた。