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白井と安永あかり、それに堀田と里奈も救急車に乗り、搬送先の病院へと向かっていた。
白井と安永あかりは、救急ベッドの上で苦しそうな表情を浮かべており、容体が悪化しているのは明らかだ。
堀田は安永あかりのすぐ側にいた。
「教えてくれ、あの蛇は何ていう名前なんだ」
尋ねる堀田の顔も切羽詰まっていた。
「ブラックマンバ・・・・・・」
どうにか声を絞り出すようにして、安永あかりが言った。
呼吸がさらに苦しげになっていた。
「ブラックマンバという蛇は、たしかに桐原さんが描いてました。
上野近くのデパートで開かれてた爬虫類展です」
里奈が言った。
緊迫と興奮が入り混じった声だった。
「毒蛇を展示してるなら、血清もあるはずだ!」
堀田は携帯電話を取り出すと、署に電話した。
署から爬虫類展の関係者にブラックマンバの血清を用意するよう命じた。
焦りのためか言葉が続かず、時折怒鳴り声が上がった。
さらには、救急車の運転手にも上野方面に行き先を変更するよう指示を出した。
「あかりさんを咬んだのも、同じ種類の蛇だったのでしょうか?」
不意に、里奈がつぶやいた。
堀田はハッとした。
安永あかりを見ると、呼吸はさらに苦しそうになっていた。




