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「頼む、何か布を持ってきてくれ!
傷口を縛るんだ」
「は、はい」
安永あかりは、棚の裏側に走った。
堀田は白井の傷口に唇を付けると、咬まれた箇所を吸い出し、吐き出した。
続いて、里奈を見た。
「外で待機している救急車の人間を呼んできてくれ、早く!」
「はい」
里奈は、慌ててアトリエの外に走り出した。
安永あかりが白い布を持ってきた。
堀田はそれを使い、傷口の上を固く縛った。
倒れた白井は視線が定まらず朦朧とし、呼吸が苦しそうになっている。
すぐに、2人の救急隊員が担架を持ってアトリエに入ってきた。
「この男を運んでくれ!」
救急隊員は言われるまま、白井を担架に乗せた。
「こいつは何ていう蛇なんだ!」
怒鳴り声を上げ振り向いた堀田の視線の先では、安永あかりがうつ伏せに倒れていた。
その足元では、2匹の蛇が絡み合っている。
「咬ませたのか」
堀田が言い終わらぬうちに、2匹の蛇は煙のように消えた。
倒れた安永あかりは、うつ伏せのままけいれんを起こしていた。
「もう1人、もう1人救急車に乗せてくれ!」
堀田がアトリエから出ようとする救急隊員に叫んだ。




