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「あの子を絶対に守りたい、彼はそう言っていたわ。
彼は死んでしまったけど、彼が妹に瓜二つで守りたいと言っていたあなたを守ることが出来た。
それを果たせたことだけは良かったと思ってる」
そう言った安永あかりの顔は、晴れ晴れとしたものに見えた。
だが、それはほんの一瞬で、すぐに瞳から涙がこぼれ落ちた。
やがて、身体を震わせ、嗚咽を漏らし始めた。
「これで復讐は終わった。
でも、でも、何て空しいんだろう。
彼も死なせてしまった」
堀田は負傷した片腕を押さえたまま、白井の側にそっと近づいた。
「自殺するかもしれん。気をつけろ」
堀田の囁きに、呆然としていた白井はハッとして顔を上げた。
堀田も銃を抜いた。
堀田は里奈を見た。
里奈も半ば放心状態になっていた。
そして、彼女を囲んでいた2匹の蛇の姿が消えていた。
「しまった!」
堀田が思わず声を出し、銃を構え振り向いた。
赤と青の2匹の蛇は、今にも安永あかりの足首のあたりに咬みつこうと、鎌首をもたげていた。
安永あかりは、テーブルの上に顔を伏せたままだった。