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ついて来た記者たちは、刑事たちの後を追って女子トイレに入ろうとした。
「てめえ、何してやがる!」
篠原はそのうちの1人の襟を掴むと、思い切り突き飛ばした。
勢い余って、後続の記者数人もドミノのように倒れた。
「警察が暴力を振るったぞ!
ワイドショーで取り上げてクビにしてやるからな!」
倒れた記者の1人がヒステリックに叫んだが、刑事たちはまったく相手にしなかった。
女子トイレに入った刑事2人は、血の跡が続く個室の前に居た。
1人が扉を軽く叩いた。
「居ますか?居たら返事をしてください」
抑えてはいるが、興奮した声だった。
しかし、中からの返事は無い。
刑事はドアノブを回した。
内側からカギがかかっており、ガチャガチャとした音だけが響いた。
「開けなさい、返事をしなさい」
刑事はなおもドアノブを回した。
しかし、中からの反応は無い。
「かまわん、中に入れ!」
篠原がトイレの入口に立っていた。
扉の前の刑事2人は顔を見合わせた。
「どちらかを持ち上げて、上から中を見ろ!」
篠原の大声がトイレの壁に反響した。
1人が扉の上に両手をかけ、その刑事の腰の辺りをもう一人が両手で抱え込んで持ち上げた。
ようやく、個室の中が覗き見れる態勢になった。