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記者やカメラマンと揉めていた刑事たちも篠原の指示に従い、いっせいに稀崎映美を追った。
篠原も巨体を揺すって控室へと向かった。
会見場に残っていた記者やカメラマンは二手に分かれた。
一方は倒れた玉川のもとに駆け寄ると、そこに居た刑事の静止も無視し、意識を失っている玉川の写真や映像をいっせいに撮りだした。
中には被害者の顔を至近距離から撮る者すらいた。
もう一方は稀崎映美と篠原ら刑事の後を追い、控室へとなだれ込んだ。
廊下をかき分けて進んだ篠原たちの前に、化粧箱を手にしたメイクと思われる女性が立っていた。
女性は怯えた顔で震えていた。
「女が、女が来ませんでしたか?刃物を持った」
女性は廊下の奥を指差した。
血の跡がわずかに残されていた。
刑事たちはすぐに走り出した。
息を切らせながら血の跡をたどると、トイレへと続いていた。
先頭の刑事が振り返り、入り口上部の女子トイレのマークを指し示した。
「かまわん、入れ!」
篠原の指示を受け、刑事たちは女子トイレに入って行った。