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「なに?」
その場に居る者たちにも、それが何なのか分らなかった。
それは空中を飛び、羽毛のある翼を持っていた。
「鳥、だと?」
それはムクドリほどの大きさで、体色はオレンジと黒に分かれていた。
鳥は会見場の上空を一度旋回すると、這いつくばって逃げようとする玉川の方へ飛んだ。
篠原を含む刑事は、飛び回る鳥と稀崎映美とを交互に見た。
しかし、思わぬ事態に迅速な決断が出来ない。
一方で、玉川は鳥にまったく気づいていなかった。
「あの鳥、どっかで見たような」
徳丸は会見席の方にふらふらと進みだした。
不意に、鳥が玉川めがけ急降下した。
玉川はいまだ気づかないまま、床の上を這っていた。
その玉川のすぐ目の前を、鳥が通過した。
「ひえっ」
玉川は目を剥き、口を大きく開けて声を出した。
直後、鳥はすさまじい勢いで玉川の口に頭から飛び込んだ。




