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「何が起きてる?
あんたには見えるのか?」
「ええ。わかるわ。
あの場に居る稀崎映美は、私の意思で動いてるんだから」
堀田の問いに答えた安永あかりは、何も映っていないノートパソコンのモニターをじっと見ていた。
堀田が突然テーブルを強く叩いた。
「これ以上罪を重ねるのはやめろ!
まだ人殺しを続けるなら、強制的に止めるぞ」
堀田は銃を取り出し、安永あかりに向けた。
「私の邪魔をすれば、あの子が死ぬことになるわ」
安永あかりは視線だけをわずかに動かした。
里奈を囲んでいる赤と青の蛇が鎌首をもたげている。
会見場では、稀崎映美が血の付着した果物ナイフを片手で持ったまま立っていた。
その前には屈強な刑事数名が立ちはだかっている。
不意に、稀崎映美はナイフを左手に持ち替えると右手でスカートの右側をゆっくりとまくし上げた。
色気で釣るつもりか?
この期に及んで、そんなものが通用すると思ってるのか?
刑事たち、さらには記者やカメラマンまでが同様に考えた。
一瞬だが、稀崎映美の白い右太ももに絵が描かれているのが見えた。
その絵は瞬時に太腿の表面から消え、次の瞬間にはスカートの中から飛び出した。