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「お、おい、何を言うんだ」
玉川は焦りと戸惑いの混じった表情を浮かべ、なんとか取り繕うとしているように見えた。
しかし、稀崎映美はまったく玉川を気にしていない。
「それを手伝っていたのがこの私、稀崎映美です。
私はこれまでに何人もの女性を誘い出し、睡眠薬を飲ませて眠らせ、この男と仲間に差し出していました。
その中には、タレントやモデルもいました。
先日亡くなった安永あかりもその1人です」
記者たちはさらに騒ぎ出した。
「おい、いい加減にしろ。
冗談にもほどがある。世界中にネット中継されてるんだぞ」
取り乱した玉川は、稀崎映美から無理矢理マイクを奪おうとした。
稀崎映美はマイクを手にしたまま、玉川をかわすようにテーブルの前に移動した。
「私はいままでの罪を償うため、さらに、犯されて亡くなった女性たちの無念を晴らすため、この場でこの男に制裁を加えます」
稀崎映美はよく通る声で言うと、床にマイクを叩きつけた。
「やめろっつってんだろうが、このアマぁ」
玉川はカリスマ経営者の姿とはまったく異なる粗野な言葉を発すると、稀崎映美に襲いかかった。
「ぐぎゃー」
叫び声が会見場に響き渡った。
男の、玉川の声だった。