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会見場では、なおも稀崎映美がのろけ話を続けていた。
「私の婚約者」
稀崎映美は照れ笑いを受かべ言うと、マイクを握ったまま横にいる玉川に顔を向けた。
玉川は満面の笑みを浮かべていた。
不意に、稀崎映美が立ち上がった。
その顔は刺々しく、一瞬で場の空気が変わった。
何事かと、視線が一斉に注がれた。
「私の夫となる彼、玉川勝正は仲間と共謀して女性を拉致監禁し、レイプした末に殺害しました。
それも1人2人ではありません。何人もの女性が犠牲になったのです」
稀崎映美の声は鋭く、冷たかった。
会見場は騒然となった。
「どういうことですか、それは」
「玉川さん、事実なんですか?」
記者たちからいっせいに声が上がった。