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「生きたまま食べられる・・・・・・」
里奈の顔が引きつっていた。
「全裸の女が熊に食べられているという目撃情報はそれか。
まさか、本当に起きていたとは」
堀田が静かに言った。
「あの女を殺すのにヒグマを選んだのは、ヒグマが生きたまま獲物を喰う習性があるのを知っていたからよ。
これでもかと思うぐらい苦しめてから殺してやろうと思った。
その通り、苦しみながら死んだわ。
その場には、稀崎映美の残骸が残った。
ヒグマはすでに消えていた。
私はもう1枚のキャンバスから、別の動物を抜け出させた。
それは、大きなワニだった。イリエワニというらしいわね。
映美の死体は、そのワニに食べさせた」
「池に引きずり込んだ跡があったのは、そのためか」
堀田の言葉に、安永あかりはうなずいた。
「あの女の骨や肉の欠片さえも残さずに、この世から消し去りたかった」
安永あかりは唇を噛んだ。