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会見場は異様な雰囲気になっていた。
「写らねえって、どういうことだ!」
徳丸は自身のガラケーのカメラを稀崎映美に向けていた。
古い機種のため画像はぼやけているが、一応写真は撮れている。
しかし、肝心の稀崎映美は写っていない。
「稀崎映美が写真に写らないんですよ」
行橋の言葉を受け、徳丸は何度も写真を撮った。
しかし、稀崎映美は写ってはいなかった。
「くそっ、故障か?」
「いや、そんなことはないですよ。
彼女の周囲のものは撮れてますし、隣の玉川さんも写ってます。
それに、ウチだけじゃないみたいですよ」
徳丸が周りを見回すと、記者たちの座る席がざわついていた。
近くのカメラマンは、社からの『稀崎映美が写っていない』というクレームにパニックになっていた。
「どうなってんだ、こりゃ。
まさか、里奈がプールにサメがいるとか言ってたのと同じ現象か?」
徳丸も唖然となった。