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「蛇に咬まれた奴らって、どうなったの?」
「毒性の強さを考えれば、おそらく助からないと思う。
僕はあそこまでするつもりはなかった」
彼は、座ったまま頭を抱えていた。
本当に苦悩しているように見えた。
「蛇が絵から抜け出すのを見た時、本当に驚いたわ。
でも、あの蛇がいなかったら、私たちは殺されていた」
私がそう言っても、彼はうつむいたままだった。
私は後ろから彼をそっと抱きしめた。
「お願いです。
あの男たち、あなたは見てないけど、あの館で私を代わる代わる犯し、あなたの妹を殺した奴らに復讐してください。
私も手伝います」
「人殺しなんて出来ないよ」
彼は同意しなかった。
私は何度も頼み込んだ。
でも、彼がうなずくことはなかった。
その後、朝食か昼食か憶えてないけど、私たちは食事を摂った。
「しばらく、ここに隠れているといい。
食事や必要なものは僕が用意する」
彼はそう言ってくれた。
彼の心遣いがありがたかった。
でも、私の頭の中は奴らに復讐することでいっぱいだった。
もう、安永あかりとして脚光を浴びることはない・・・・・・。
私は、奴らへの復讐にすべてを捧げる覚悟を決めた。




