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安永あかりは、さらに話し続けた。
彼に手を引かれ、私は山の中を進んだ。
これからどうなるのか、まったく分からなかった。
でも、彼についていく以外に残された道は無かった。
山中の窪地に一台の車が停めてあり、私たちはそれに乗り込んだ。
暗い山道を下っている時、いつ玉川たちが追ってくるかと、ずっと怖かった。
彼は、このアトリエに車を着けた。
その頃には、だいぶ明るくなっていた。
中に入った私たちは、椅子に腰かけた。
彼は、桐原京介と名乗り、それきり黙り込んだ。
きっと、妹の死を知ったこと、そして、思いがけず私をたすけるため、男たちに蛇を咬みつかせたことで相当なショックを受けていたのだと思う。
一時間経ち、顔を上げた彼は、警察に行くと言った。
私は必死で止めた。
奴らは、警察は動かないと言っていた。
逆に、彼とともに逃げた私の情報が洩れたら、どんな酷い目に遭わされるか・・・・・・。
私は怖かった。
勝手に身体が震えだして止まらない程に。
同時に、私は玉川たちが憎かった。
1人1人この世から消し去ってやりたい、いいえ、これ以上ないほどに苦しめてから殺してやりたい、そう思っていた。




