291/341
291
「さっさと女をこっちに渡せ!
そうすりゃあ、命だけはたすけてやる」
「いや、お願い、たすけて。
私、殺される」
私はその人にしがみついた。
「それはまずいぜ。
こいつが誰かにしゃべったら、面倒なことになる」
「それもそうだな。
あんたにも死んでもらうぜ」
男たちはそんなことを言っていた。
「一つ聞きたいことがある」
その人が男たちに向かって口を開いた。
絶望的な状況なのに、動じている様子はまったく無かった。
「妹がこの近くの館に連れ去られた。
そこまでは調べた。間違いない。
妹はまだあの館にいるのか?
知っているなら教えてくれ」
その人は真剣な顔で言った。
それを聞いた男たちは、馬鹿にするように笑い出した。
「けっ、そんなことか」
「あの館に連れ込まれた女たちはな、みんな殺されたよ。
散々犯された後でな」
男たちはどっと笑いだした。
「何だと!」
低く唸るように言った彼の体が、震えているのがわかった。




