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キラーB 28
「数日前ですが、このミズダコを熱心にスケッチしてる人が居ました」
「スケッチ?」
「ええ。ずっとミズダコばかり描いてました。ちらっと見ただけですが、凄く上手かったので、印象に残ってます」
「どんな人でしたか?」
堀田がそう飼育員に尋ねたところで、
「主任、全然関係ない話じゃないですか」
すぐ横で堀田と飼育員のやり取りを聞いていた白井が言った。
「ああ、そうだな」
堀田はつぶやく様に言うと、飼育員に丁寧に礼を言い、頭を下げた。
堀田と白井は、その場を後にした。
「タコが殺ったと疑ってるんですか?」
帰りの車の中で、白井が尋ねた。
「専門家に聞いても良かったんだが、さすがに気が引けてな。
ここで聞けばこと足りると思ったんだが」
堀田の言葉は歯切れが悪かった。
「犯人のだいたいの目星はついたんですか?」
「まったく、わからんよ」
間髪入れずにそう言った堀田は、大きなため息を吐いた。




