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「ああ」
私はしゃがみこんだ。
もう、どうやっても逃げられない。
男たちの声は、しだいにはっきりと聞こえてきた。
「いたかー?」
「こっちにはいねえ」
「どうせこの山からは逃げられっこねえんだ。
ゆっくり探そうぜ」
「捕まえたらどうするんすか?」
「絞めるのは玉川さんたちの前ですることになってる。
それまでは何をしてもいいってよ。
俺たちもおこぼれにあずかれるってわけだ」
「現役モデルを喰っちゃっていいんすね?」
「ああ。殺される直前の上玉を好きにしていいんだぜ。
それと動画の出来が良ければ金も弾んでくれるそうだ。
女の顔、ばっちり映せよ」
「顔だけじゃなく、身体もっすね」
「マスコミも警察も玉川さんたちが押さえてるから、何しようが、ぜってーに捕まらねえぜ」
「了解ぃ」
男たちの声は、さらに大きくなった。
それに混じって、下品な笑い声も聞こえてくる。
私はしゃがんだまま、少しづつ移動した。
振り返ると、ライトの光が猟犬のように嗅ぎまわっていた。
ライトで照らされたら、裸の私はすぐに見つかってしまう。
震えが止まらなかった。




