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会見は玉川と稀崎、2人の馴れ初めエピソードの紹介に入った。
「事件に巻き込まれた映美さんは心身ともに傷つき、ひどく落ち込んでいました。
そんな彼女を、玉川さんは陰から献身的に支えたのです」
会見場に大袈裟なナレーションが続いた。
「先輩、何やってるんですか」
里奈がつぶやいた。
記者席のさらに奥の壁にもたれ、大きなあくびをしている徳丸の姿が画面に一瞬映った。
「一連の事件に桐原は関係していたのか?」
堀田が尋ねた。
少しの間の後、安永あかりはそちらに顔を向け、うなずいた。
里奈は、大きなため息を吐いた。
「だが、桐原は死んだ。
それなのに、異様な殺人は続いている。
たった今も、この目で見たばかりだ。
どういうことなんだ」
安永あかりは、ノートパソコンの画面に向き直った。
「一月ちょっと前、私は友達に誘われ、あるバーに行った。
その子と飲んでいるうちに急に眠くなり、眠ってしまった。
目が覚めた時、私は一人どこかわからない建物の中にいた」
安永あかりは、話し始めた。
モニターでは、なおも婚約中継が流れている。




