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「私は幽霊などではありません。
本物の安永あかりです」
対照的に、安永あかりは驚くほど落ち着いて見えた。
「だったら、あの事故で死んだ女は・・・・・・。
玉川社長の車に飛び込んで死んだ女は誰なんだ!」
堀田は声を荒げた。
「聞きたいんですけど」
声を発したのは里奈だった。
里奈は2匹の蛇にぐるり足元を囲まれ、両足をそろえたまま、直立に近い姿勢で立っていた。
「桐原さんが描いた絵から、生き物が抜け出した。
それはもう、間違いないと思います。
あなたの事故もそれと関係があるんじゃないですか?」
安永あかりは里奈の問いには答えず、立ち上がると棚の後ろに歩いて行った。
そこからビジネス用カバンを持ってくるとテーブル上に置き、中からノートパソコンを取り出した。
安永あかりはそれを立ち上げた。
ノートパソコンの画面は、他の3人からも見える位置にあった。
「ちょっと見たい動画があるので、いいですよね?
とは言っても、あなた達が私に逆らうことなど出来ないか」
安永あかりは独り言のように言い、インターネットのサイトにアクセスすると、動画を画面上に映し出した。
そこには、玉川勝正と稀崎映美の婚約会見の生中継が流れていた。




