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「我々を脅すつもりか?
どうやって殺すというのだね」
堀田の口調がそれまでのソフトなものから変わった。
対する女性は何も答えず、口元に笑みを浮かべた。
その後、かすかに首を傾け、濃い色の入ったメガネの縁を片手で持ち、鼻の先端までずらした。
女性の目が一瞬見えた。
里奈は、その顔をどこかで見たような気がした。
女性の視線は斜め下、ちょうど里奈の足元の辺りに向けられていた。
「あっ」
そこには細くて長い物体があった。
それは、シューッと音を立て動いていた。
蛇だった。
2匹いた。
それぞれが赤と青の毒々しいまでに鮮やかな体色をしていた。
「動かないで!」
その声は、それまでとは異なり鋭かった。
女性は椅子に腰かけたままで、メガネも元通りかけていた。




