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音のテンポはさらに速くなり、人の声は突如悲鳴に変わった。
銃声がした。1、2、3発。
直後、車の事故のような大きな衝撃音がした。
同時に、断末魔の声が辺りに響き渡った。
その声が消えると、今度は別の男の声が聞こえた。
何かから逃げているかのようだった。
開いたドアの間から、外の様子が見えた。
「何だ、あれは?」
暗いためはっきり見えないが、叫び声から逃げているのは杉尾らしいとわかった。
その背後から、金色の光を放つ2つの目が猛スピードで迫っていた。
「でかい」
堀田も杉尾も、凍りついたように体が動かなかった。
「たすけてくれー」
杉尾の声が響いた。
アトリエの中からも、こちらに逃げてくるシルエットが見えた。
が、それが突如消えた。
同時に、けたたましい獣の叫び声と、地響きがした。
アトリエ内の者が息を呑む中、ほんのわずかの時間の後、外でドサッという音がした。
何かが空から降ってきたような音だった。
その音しか聞こえず、その後は静まり返った。
あれほどしていた鳴き声も足音も、まったく消えていた。




