271
杉尾が割ったものとは反対側の窓ガラスに、銃弾が撃ち込まれた。
ガラスは大きな音とともに砕け散っていた。
「窓から死角になる場所に移動しろ」
堀田がみなに指示を出した。
里奈は棚の裏に小さな身体を滑り込ませた。
白井は堀田の肩を抱き、絵画用三脚の陰に移動した。
途中、堀田は白井の耳元で囁いた。
「隠れたまま、すべての窓に注意を向けろ。
何か見えたら、かまわず撃て。
責任はすべて俺がとる。
おまえが死んだら、他の者も殺される。
人の命がかかってる」
白井はうなずいた。
突然、杉尾が立ち上がり、走った。
数歩でドアにたどり着くと、手錠がついたままの手で鍵を開け、ドアを開け放し、アトリエの外へと飛び出した。
「くそっ」
堀田が舌打ちした。
杉尾は外に立てかけてあったバールを両手で持つとドアに叩きつけ、そのまま走り去った。
ドアは空いたままとなり、外からは丸見えになった。
「どうして?手錠がついたままなのに」
里奈が呆気に取られ言った。
「ここにいる全員を殺し屋に殺させ、後から手錠のキーを手に入れるつもりなんだろう。
全員が死ねば、裏で悪党どもとつながってることも知られずに済む」
堀田が吐き捨てるように言った。




