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「建造物等損壊罪の現行犯により、杉尾副総監、あなたを逮捕します」
息が上がってはいるが、冷静な声だった。
同時に、カチャリという冷たい金属音が聞こえた。
アトリエの外では、杉尾が腹這いで組み伏せられていた。
その上に2人の別の男性、刑事の堀田と白井が馬乗りになっている。
杉尾は倒れたまま手を上方に伸ばされ、両手首に手錠がかけられていた。
杉尾はその体勢でもなお暴れている。
大の男2人がかりでも、押さえつけるのは容易ではなさそうだった。
「何の真似だ、これは!」
杉尾が唸るような声を出した。
「この位でお止めください。
これ以上はさすがにまずいと思い、止めさせていただきました」
堀田が言った。
「きさま、誰に向かって言っている。
それに、おまえたちは玉川さんの警護に行ってるはずだぞ」
「たしかに、そう命令は受けました。
ですが、私と白井はずっとあなたをマークしていたんです」
「きさまらー」
男たちの激しい息づかいが、アトリエの中まで伝わった。
「俺を捕まえることが出来るものか。
俺が何をやったっていうんだ。
たかが建造物損壊ぐらいで。
おまえたち、署に戻ったら憶えてろよ」
杉尾が吐き捨てた。感情が昂り、普段の姿とはまるで違っていた。
しかし、堀田がそれで怯むことはなかった。
「ここでの一部始終を白井が動画に撮っています。
もし、これをインターネット上に流したら、あなたはただでは済まなくなりますよ」
堀田が言うと、杉尾は力が抜けたようにおとなしくなった。




