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アトリエ内は、テーブルの上に画材が作業途中のように無造作に置かれ、棚にはキャンバスがいくつも詰め込まれていた。
さらに、いくつか置かれてある絵画用の三脚には、桐原が描いたと思われる絵が飾られていた。
それらは未完成のまま、あまり手は入っておらず、里奈が探しているような生物が描かれたものは無かった。
女性は、里奈に椅子に座るよう促した。
里奈は戸惑いながらも、テーブルの前に置かれた木製の椅子に腰かけた。
見ると、その椅子もテーブルも手作りであるように思われた。
女性は、奥にある流しの前に行くと、ヤカンに水を注ぎ、コンロの上に置いて火をかけた。
この建物の外観も内装も、置いてあるアイテムの1つ1つも質素に見え、目の前の女性の雰囲気に合っていないように、里奈には思えた。
「私がここに来たのは、桐原さんが描いた絵について、あることを確かめたかったからです」
不意に、そんな言葉が口をついて出た。
里奈の顔は、ひどく強張っていた。




