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「桐原がプロの絵描きなら、アトリエがあるはずだ。
ヤツの自宅とアトリエを調べ尽くし、絵をすべて処分してくれ。今すぐだ!
こっちはこれから婚約会見の準備で忙しい。
あんたの方でやってくれ。今日中にだ!
さまなくば、これまであんたがやってきた悪事を、マスコミを使って大々的に暴露するぞ!」
みるみる杉尾の顔が青ざめた。
「わ、わかりました。すぐに調べて回収します。
いや、その場で燃やします。
必ず、そうします」
杉尾は慌てて言った。
「それから、会見中も何が起きるかわからない。
警官を何人も警備につかせてくれ。
そして、会見場に入る記者どもを1人1人厳重に調べるんだ」
「あの」
「何だ」
「会見を延期するわけにはいきませんか?」
杉尾は弱々しい声で言った。
「バカ言うな!
うちのグループを大々的に宣伝するチャンスなんだ。
今さら延期なんて出来るか。
それじゃ、あとは頼んだぞ」
玉川はそこまで言うと、一方的に電話を切った。
杉尾は机の上に両手を置いたまま、大きくため息を吐いた。
婚約会見の警備の方は、なんとかしよう。
難事件が続くこの忙しい時に、人員の確保は難しいが、仕方がない。
問題は桐原の絵の方だ。
さすがに部下の警官たちに頼むわけにはいかない。
どうしたものか。
杉尾は、再度大きくため息を吐いた。




