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「2人はあの女を捕まえ、車に連れ込もうとしていたんです。
殺さないようにと、私が念を押しましたからね」
「はい」
「2人は女を捕まえる寸前だった。
それ以外にもう1人、車の運転する者がいて、近くに車を着けて様子を見ていた。
運転手は、2人が女を連れ込んだら、すぐに車を出せるようにしていた。
ところが、2人の前に突然、巨大なクマが現れたというんです」
「巨大なクマ?」
「運転手の話では、シロクマのようだったが、頭や体の一部が黒かった。
そいつが、2人をあっという間に殺してしまったというんです」
「まさか」
「運転手は恐ろしくなり、その場から車ですぐに立ち去ったそうです。
もちろん、組織が絡んでますので、警察の取り調べを受けさせるわけにはいきません」
「そ、そうですね」
「あの桐原という男は、本当に死んだんでしょうね」
玉川は、低い声でうなるように言った。




