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シロクマの顔周辺から胸元、さらには肩の辺りにかけて、うっすらと黒ずみがある。
男たちを襲った際に付着した血の跡だろうか?
いや、違う。
里奈はこのシロクマに見覚えがあった。
桐原さんの・・・・・・。
それは、動物園で桐原が描いていたシロクマに似ていた。
黒ずみは、里奈が誤って絵の上にコーヒーをこぼした際に付いたもの・・・・・・としか思えなかった。
いくつかのことが、頭の中でつながった。
桐原は港で巨大なサメを描いていた。
その後、プールにサメが現れた。
そのサメは、写真には写らなかった。
里奈はカメラを構えた。
するとシロクマは里奈にお尻を向け、ゆっくりと歩き出した。
恐怖で手が震えた。
それは、先程までの自分が殺されるかもしれないというものとは、別の種類の恐怖だった。
里奈は、一瞬シャッターを押すのをためらった。
次の瞬間、シロクマは忽然と目の前から消えた。
全身から力が抜け、里奈はその場にへたり込んだ。
男たちの悲鳴を聞きいた人たちが駆けつけ、辺りは騒然となった。
里奈は断片的にそうしたことを覚えてはいたが、その後の記憶は無くなっており、気づいた時には自分の部屋に居た。




