247
視線の先では男が2人、路上の別の場所に倒れていた。
里奈を追っていた男たちに違いなく、長髪の男はうつぶせに、短髪の男は仰向けに倒れている。
里奈は、さらにその先に視線を移した。
薄暗い照明の灯ったバーの手前、陰になったところに、白く巨大な物が立っていた。
それはあまりにも大きかったが、動かないでいると、まるで店舗のマスコット人形にも見える。
だが、それは、ゆっくりと前方に倒れるようにして前足をコンクリートの上に着き、四つ足になった。
巨大なシロクマが都会の夜の路地に佇んでいる。
どうやって、ここへ?
シロクマが男たちを殺したの?
いろいろな考えが次々と浮かんだ。
そして・・・・・・
次はあたし、だ。
里奈は震える身体で、この巨獣から遠ざかろうとした。
だが、腰が抜けて、立ち上がることが出来ない。
男たちから逃げたと思ったら、次はシロクマ!
男たちは殺さないと言ったが、動物は容赦してはくれないだろう。
里奈は半泣きで、這ったまま逃げ出した。
アスファルトが膝頭に当たったが、恐怖でほとんど痛みを感じない。
どうにか逃げようとするが、焦れば焦るほどまったく進まなかった。
不意に、シロクマがゆっくりと長い首の先にある顔をこちらに向けた。
倒れたままの里奈とシロクマの目が合った。
「あ・・・・・・」
里奈の口から声が漏れた。




