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アスファルトを蹴る音が、背後から迫っている。
里奈は走りながら、肩越しに振り返った。
2人の男たちは、もう20メートルを切る距離まで迫っていた。
里奈は慌てて、さらに狭い路地に入った。
こんな所に来ても逃げ切れるわけないのに。
まだ、人が大勢いる場所の方がマシだったんじゃ・・・・・・。
あまりの馬鹿さに悔しくなった。
「その女、殺すなよ。
生きたまま捕まえろ」
背後で声がした。
2人のうちのどちらかだ。
「わかりました」
日本人とは明らかに異なるイントネーションで、もう1人が答えた。
もう逃げられないとわかり、里奈の全身から力が抜けた。
足がもつれ、前方に倒れ込んだ。
それでも、カメラが落ちて壊れないよう、瞬時にバッグをその下に置いた。
「終わった」
そう思った。




