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2人は道に沿って、里奈が逃げようとする方向に走り出した。
顔はずっとこちらを向いている。
車が途切れたら、すぐに道路を渡ってくるだろう。
その瞬間は、30秒もしないうちにやってくる。
里奈は通りから離れ、路地へと入った。
曲がる直前、男たちが道路を渡ってくるのが見えた。
里奈の足は遅くはなく、どちらかというと速い方だったが、殺し屋と思われる連中を振り切る自信は、とてもではないが持っていない。
さらには、首から下げているカメラが邪魔だった。
捨てることも出来ず、追い詰められたら一か八かでぶつけてやろうと考えた。
里奈が入った路地は、両側にしゃれた雰囲気のバーや居酒屋が立ち並び、まばらではあるが人も歩いている。
里奈はそれを避けながら、懸命に走った。
気づいた時には、悲鳴と助けを求める声を上げていた。
道行く人は、何事かと振り返った。
だが、里奈は立ち止まろうとはしなかった。
桐原は白昼、人が大勢見ている前で殺された。
自分を追っている者も同じような連中だろう。
他の人たちを巻き込むわけにはいかない。
自分で何とかしなければ。
だが、足は限界に近づいていた。
さほどの距離ではないが、全力で走ったことと、極度の緊張感とで爪先に力が入らなくなり、膝が笑い出していた。




