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ほんの数日前、御徒町動物園の前で桐原京介が殺された。
その際、里奈は犯人に刃物を突きつけられた。
命の危険に晒されたばかりだというのに、一体、私は何をやっているのか。
警察に電話しようか?
でも、あいつらが私を殺すつもりなら、今から電話しても間に合わない。
それに、警察にどう説明すればいいのか。
さらに、自分が先ほど話を聞こうとしたのは、警察の人間ではないか。
見ると、反対方向に走っていた2人は、店の前に戻っていた。何事か話しているようだが、内容はわからない。
里奈は、2人に気づかれぬよう、この場を離れることにした。
徳丸が言った「死んだら、お終い」という言葉が頭に浮かんだ。
でも、もしかしたら、私の思い過ごしかもしれない。
そうだ。そうに決まってる。
里奈は、震える足を手で押さえながら、自身にそう言い聞かせた。




