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杉尾が去った後も、里奈は店の張り込みを続けていた。
道路をはさんだ反対側の植え込みの中に、小さな身体を隠して。
近くの歩道を通った人は、訝しく思ったに違いない。
しゃがみこんだ里奈は、カメラを両手で持ち、じっと店の入口を見ていた。
夜が更けていくにつれ、だいぶ涼しくなり、Tシャツ姿の里奈は、肌寒さを感じていた。
少し前まで目の前の道路に連なっていた車のライトも、間隔が開き、まばらになっている。
不意に、店の前に一台の車がつけられた。黒塗りの高級車だ。
すぐにドアが荒っぽく開けられ、上下黒のスーツ姿の男2人が後部座席から出てきた。
1人は長身で肩に届くほどの長髪、もう一人はずんぐりした体躯で、髪を短く刈り込んでいた。
髪の短い男の耳に着けられたピアスが、反射して眩しく光った。
2人はきょろきょろと周囲を見回しながら、軽い足どりで走り出した。
何かを探しているように見えた。
何をしているんだろう?
里奈は、呆然と2人を見ていた。
店の周りを回った2人は入り口の前で顔を合わせると、今度は反対方向にそれぞれ走り出した。
もしかして・・・・・・、私を探してる?
ふと、そんな考えが浮かんだ途端、里奈の背中は凍りついたように冷たくなった。




