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玉川は先程の流れで、店の女とよろしくやっていたに違いない。
相手の不機嫌そうな声に、杉尾は電話をかけなければよかったかと、少し後悔した。
「お疲れのところ申し訳ございません。
店を出た後、おかしな女に絡まれたものですから。
玉川社長にお伝えしなければと思いまして」
「おかしな女?」
「ええ。いきなり、雑誌のカメラマンを名乗って突っかかってきまして。
根掘り葉掘り聞かれました。ろくに経験も無いんでしょう。
かなり失礼な口の利き方でした」
「その女はどうなりました?」
「私はタクシーで帰りましたが、女はまだ、その辺にいるかもしれません。
ずいぶんと子供っぽい顔で、首からカメラをかけてました。
そうそう、いきなり写真まで撮られましたよ。
玉川社長も気をつけてください」
少し間が開いてから、
「ご連絡いただき、ありがとうございます。その件はこちらで何とかしましょう」
玉川はそう言うと、電話を切った。




