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なんだ、子どもか。
「誰だね、君は?」
怒鳴りつけたいのを我慢し、杉尾が尋ねた。
「わ、私は、出版社で雑誌のカメラマンをしてる者です。
さ、殺人事件の真相を暴くため、あなたに聞きたいことがあります」
里奈の態度は、随分たどたどしいものだった。
杉尾はホッとし、里奈を無視しようと思ったが、『殺人事件』という言葉が引っ掛かった。
この女、どこまで知ってるんだ。
さっさとタクシーに乗りたいのを我慢し、杉尾は目の前の若い女と話してみることにした。
「殺人事件?このところ多くてね。どの事件のことかな?」
「桐原京介さんが殺された事件です」
杉尾の頬がかすかに引きつった。




