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「あら、もうお帰りですか?
せっかくお持ちいたしましたのに」
女は言うと、持ってきたワインボトルをテーブルに置いた。
「明日も仕事ですからね。
社長はどうぞごゆっくり」
杉尾は紙袋を両手に抱え、満面の笑みを浮かべていた。
「お見送りいたしますわ」
女は言うと、杉尾とともに部屋を出て行った。
部屋に一人きりになった玉川はスマートフォンを手にし、電話をかけた。
「例の件、正式に決まりましたので、お願いします。
わが社の評判もここのところ芳しくなく、株価も低迷してますしね。ここらでテコ入れしないと。
発表は明日の午後3時。
会見の日取りは・・・・・・、あらためて連絡しますが、なるべく早くするつもりです。
マスコミのみなさんにはまた、わが社を大々的に宣伝していただかないと」
そのまま10分ほど玉川は話し、電話を切った。
しばらくして、部屋のドアがノックされた。
玉川の返事に応じて入ってきたのは、先程の女だった。
女は玉川の横に座り、しなだれかかると、自ら唇を重ねた。
2人は、そのままソファーに倒れ込んだ。




